2018/11/24 乳牛の妊娠後期から泌乳初期における飼料中リンの低減が血中カルシウム濃度に及ぼす影響についての短報を読んでみた


乳牛の妊娠後期から泌乳初期における食餌性リンの低減が血中カルシウム濃度に及ぼす影響についての短報(10.3168/jds.2018-14642)を読んでみた。

  • 【背景】
    周産期の低カルシウム血症は乳牛において経済的損失が最も大きい疾病の一つである。これまでに、妊娠後期の飼料中リンの過剰給与が周産期の血中カルシウム濃度に悪影響を及ぼすことが分かっている。
  • 【目的】
    妊娠後期からの飼料中リンの低減が周産期の血中カルシウム濃度に及ぼす影響を明らかにすること。
  • 【材料と方法】
    18頭の経産牛をランダムにコントロール群と低リン群の2群に分けた。コントロール群ではNRC2001に沿ってリンをリン酸水素ナトリウム給与し、低リン群では給与しなかった。分娩-28, -10, -2日, 分娩後+1, +3日で採血し、カルシウム濃度、無機リン濃度、副甲状腺ホルモン濃度、骨吸収マーカー濃度を測定した。
  • 【結果】
    ①乾乳期用TMRのリン濃度は、コントロール群で0.28%、低リン群で0.15%となった。泌乳期用TMRのリン濃度は、コントロール群で0.44%、低リン群で0.20%となった(Table 1)。

    ②血中のカルシウム濃度と副甲状腺ホルモン濃度は分娩前に両群で変化がなかったが、無機リン濃度は低リン群で有意に減少し、骨吸収マーカー濃度は低リン群で有意に上昇した(Figure 1, Table 3)。分娩時にコントロール群で副甲状腺ホルモン濃度は有意に上昇した(Table 2)。

    ③分娩後分娩後+1, +3日で、血中のカルシウム濃度は低リン群で有意に上昇した(Figure 1)。また、分娩後+3日で骨吸収マーカー濃度も低リン群で有意に上昇していた(Table 2)。

    ④臨床型の低カルシウム血症は、コントロール群で33.3% (3/9)に発生したが、低リン群では0% (0/9)だった。

  • 【結論】
    分娩後の低カルシウム血症予防のためには妊娠後期の飼料中リンを低減した方が良さそうだが、その潜在的な悪影響については今後さらに精査する必要がある。
  • 【感想】
    分娩→低カルシウム血症→副甲状腺ホルモン濃度上昇、というのが牛の生体反応。それを、飼料中リン濃度低減→血中無機リン濃度減少→骨吸収増加→結果として血中カルシウム濃度が高く推移という解釈。取り組みとしては簡単に実行できるし、何よりも農家に理解してもらいやすそうだ。
  • Bibliography

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