2023/11/12 牛の脱出胚盤胞の方向の研究


最近に読んだ牛の論文から今日は以下を紹介します。


The bovine embryo hatches from the zona pellucida through either the embryonic or abembryonic pole
(28466234)

この研究は、牛の胚が透明帯から孵化する過程に焦点を当てている。この孵化過程は、胚が子宮内に着床し、胎盤を形成するために必須である。孵化がうまく行かないと、妊娠しない。

研究の主なポイントは以下の通り。
孵化のメカニズム:
胚盤胞の拡大による透明帯への機械的な圧力、酵素による透明帯の軟化、栄養膜細胞(TE)の突起による透明帯への貫通が孵化の3つの主要メカニズムである。
孵化の位置:
牛の胚では、孵化は胚極または非胚極のいずれかから行われる。胚極は内部細胞塊(ICM)に隣接しており、非胚極はその反対側。
研究方法:
光顕微鏡と蛍光免疫染色を使用して、84個のブラストシストを観察し、孵化位置を分類。孵化はICMに隣接する胚極からか、その反対側の非胚極からかで分類。
結果:
観察された胚の55%が胚極から、45%が非胚極から孵化。非胚極から孵化した胚のうち、31個がICMの横から、19個がICMの反対側から孵化。
孵化部位による胚の構成の違い:
胚極から孵化した胚では、孵化した部分にTEやICM由来の細胞が含まれていました。一方、非胚極から孵化した場合、孵化した部分にはほとんどまたは完全にTE細胞のみが含まれていた。


約50%だから、偶然ってことかなぁ。その後の発達への影響も気になるな。

Bibliography

2023/11/1 2023年9月の乳用牛群検定成績のベンチマークを公開しました


2023年9月の乳用牛群検定成績のベンチマーク
Benchmark_2023-09

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2023/10/17 皮下グルコースで牛の分娩を予測する話


最近に読んだ牛の論文から今日は以下を紹介します。


Calving prediction with continuous measurement of subcutaneous tissue glucose concentration in pregnant cows
(36940636)

この研究は、妊娠牛の出産予測において皮下組織のグルコース濃度を連続測定するデバイスを牛で試した。通常、出産の前に血糖濃度が増加することが知られているが、血液採取はストレスを牛に与えるため、この方法が実際には困難。そこで、この研究ではウェアラブルセンサーを使用して皮下組織のグルコース濃度(tGLU)を測定し、その変動を通じて出産を予測しようとした。

研究の要点は以下のとおり。

  • 連続測定: ウェアラブルセンサーを使用して15分ごとにtGLUを連続測定した。これにより、血液採取によるストレスを避けつつ、グルコース濃度の変動を確認できた。
  • 出産前後のtGLUの変動: 分娩の約2.8時間前から3.5時間後までの間に、tGLUが一時的に増加。この変動は分娩の指標になり得る。
  • 個体差と初産牛と経産牛の違い: 個体ごとの基本的なtGLUにはバリエーションがあり、初産牛は経産牛よりもtGLUが高かった。これは従来のGLUの報告通り。
  • 出産予測: tGLUの3時間移動平均の最大相対増加量を使用して出産を予測した。ROC分析により、24時間、18時間、12時間、および6時間以内の出産を予測するためのカットオフポイントを設定。
  • 予測性能: 出産予測のためのtGLUカットオフポイントに到達した時点と実際の出産との間の時間間隔は平均で12.3 ± 5.6時間でした。ほとんどの牛が少なくとも2つのカットオフポイントに到達し、分娩が満足のいく予測が得られた。
  • 技術の向上: 今後、機械学習ベースの予測アルゴリズムや牛に最適化されたセンサーの進歩が、tGLUを使用した出産予測の精度を向上させる可能性がある。

  • この研究により、ウェアラブルセンサーによる皮下組織のグルコース濃度が牛の分娩予測において有用な指標となる可能性が示された。分娩予測のウェアラブルデバイスはかなり出揃った感がある。次は普及の段階だろう。うまく助成金などを用いてこれらのデバイスを取り入れ、分娩事故低減や労働時間軽減に取り組んで欲しい。

    Bibliography

    2023/10/14 2023年8月の乳用牛群検定成績のベンチマークを公開しました


    2023年8月の乳用牛群検定成績のベンチマーク
    Benchmark_2023-08_1

    乳用牛群検定成績のベンチマークおよびランキングに参加されたい方は是非ご連絡ください。現在、お試しで無料です。

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    2023/10/13 牛の両側性内斜視の原因候補遺伝子が見つかった話


    セミナーで牛の牛の両側性内斜視の原因候補遺伝子が見つかったという2021年の研究を知った。元ネタは以下の論文である。症例の写真も見ることができる。
    GWAS Hits for Bilateral Convergent Strabismus with Exophthalmos in Holstein Cattle Using Imputed Sequence Level Genotypes

    この研究は、ホルスタイン種牛における両側性収束性斜視と眼球突出(Bilateral Convergent Strabismus with Exophthalmos, BCSE)の表現型特性と関連ゲノム領域を調査する目的で行われた。BCSEは軽度だが進行性の障害で、生後最初の2年間に牛に視覚的な悪影響を与える。初めのGWASでは関連SNPは検出されなかったが、Inputation後のGWASで3つの異なる染色体上に有意に関連するSNPが見つかった。これらの領域には、ABCC4遺伝子や、NCOR2およびDNAJC3遺伝子に隣接するマーカーが含まれており、これらが候補遺伝子と考えられる。この結果は、BCSEの遺伝が単一遺伝ではなく複雑であることを示している。また、病理学的評価では、検査された2頭の動物の眼筋に中程度から重度の変性と再生が見られた。

    このグループでは52頭もの発症牛を見つけてサンプルとしている。よくもこんなに多く見つけたものだ。僕自身、このような症例を見たことは1, 2例しかなかったように思う。