両側の先天性屈腱短縮症:Bovi-bondによる蹄延長化


生後すぐの牛がナックルでうまく立てないと昨年末に診療依頼があった。

見に行くと、両前肢がナックルであり、起立の維持は不能であった。右前肢は球節で屈曲しており、左前肢は球節および手根関節で強く屈曲していた。非侵襲的に矯正することにした。

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まず、右前肢について、治療経過を記す。

右前肢は起立させると蹄尖を着くことができるため、石膏による蹄延長化を試みた。以前までは、使用する石膏にテクノビット(Technovit)を使用していたが、今回はボビーボンド(Bovi-bond)で試してみた。Bovi-bondはTechnovitより成形するのが難しいは分かっていたので、蹄をゴム手袋をした手で包み込むようにし流し込んだ。ドロドロの状態からすぐに硬化するため、指の形に溝がついたいびつな蹄延長化になってしまった。仕方なく、負重する面をヤスリで少し削った。

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当日より、蹄延長化のおかげで起立状態は良化した。球節と屈腱には負担がかかるので、少し痛そうに見える。

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しかし、起立時間が延びると、それがリハビリとなり、屈曲は徐々に緩和していく。最終的に、正常に見えるまで回復した。なお、Bovi-bondはヤスリで削り落としました(その途中でボロッと取れました)。

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次回は、この子牛の左前肢について。

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「両側の先天性屈腱短縮症:Bovi-bondによる蹄延長化」への4件のフィードバック

  1. 蹄尖部の延長ですか。勉強になります。
    先天性の屈腱短縮の症例、
    屈腱だけではなく、伸腱も長さが足りないように思えたことはないですか?
    あと、OTCのCaキレート効果は併用しませんか?

    1. >通りすがりさん
      コメントと質問ありがとうございます。伸腱については短いと感じたことはありませんでした。ただ、それは今まで注意して見ていなかったからかもしれません。

      OTCについては全く使っていません。David E. Anderson(2008)の総説”Management of Tendon Disorders in Cattle”によると、OTCの症例報告は仔馬だけですし、44mg/kgとかなりの高濃度使用のため、腎不全のリスクを指摘しています。子牛の体重を50kgだと仮定すると、OTCで2200mg=2.2gで、普段使用している1g/20mlのバイアルですと44mlです。うーん、僕には使う度胸がありません。原著は以下のようです。
      Effect of oxytetracycline on metacarpophalangeal and distal interphalangeal joint angles in newborn foals.Madison JB, Garber JL, Rice B, Stumf AJ, Zimmer AE, Ott EA.
      J Am Vet Med Assoc. 1994 Jan 15;204(2):246-9.

      蹄尖さえ自分で着ければ(固定等含めて)、”リハビリ”で次第に治ると僕は考えています。

      1. お返事ありがとうございます。
        44mg/kg~、、
        成馬の投与量が5mg/kgらしいですから、そりゃすごいですね。

        そうですか、意味ないのかぁ。
        先日、ギプス固定してOTC2g i.v. で良くなったんですけど、OTCが効いたんじゃなくて、それはギプスの為だったんですね。

        子牛の感染症にOTCを続けていると、10mg/kgでも球節が沈んでくるような気がしますが、気のせいですかね?

        ところで、私は今まで抗生物質の副作用としての腎障害を経験したことがないのですが、腎障害のご経験はありますか?

        1. >通りすがりさん
          OTCの効果もあるのではないでしょうか(論文で効果が証明されていますし)。感染症でOTCを使用した症例について、肢をまじまじと検討したことがないので、効果について僕は正直分かりません。

          腎障害ですか、これも分かりません(笑)。基本、同一の抗生物質は5日までしか使いませんし、高濃度でも使っていません。治療により腎障害に陥った(と感じた)経験はありません。教科書や指示書でよく書かれていいますけど。

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